カルスト地形に建てられた天文台は、天文学の秘密を何度も「目撃」してきた

著者 |王清

監査 |ディン・イー

編集者 |趙静源

夜のアレシボ天文台。画像提供: セントラルフロリダ大学

アレシボ天文台は、米国の海外領土であるプエルトリコのアレシボから南に約20キロの谷間に位置しています。世界最大の単一口径球面電波望遠鏡があることで有名です。この天文台は天文学研究の重要な拠点であるだけでなく、人類の宇宙探査における画期的な出来事でもあります。

アレシボ天文台の近くの地形は、自然に形成されたカルスト地形という独特な地形で、大型の電波望遠鏡を建設するのに理想的な場所となっています。天文台の建設は 1960 年に始まり、1963 年に完成し、電波天文学の分野における重要な前進となりました。

アレシボ電波望遠鏡。画像提供: フロリダ宇宙研究所

アレシボ天文台の主要施設は、直径 305 メートルの球形電波望遠鏡で、一般にアレシボ電波望遠鏡と呼ばれています。また、小型の電波望遠鏡（直径12メートル）、ライダー施設、ビジターセンターも設置されています。 2016年に我が国の500メートル口径球面電波望遠鏡（FAST）が完成するまで、アレシボ電波望遠鏡は世界最大の単一口径球面電波望遠鏡でした[1974年に建造されたロシア科学アカデミー電波望遠鏡600（RATAN-600）は口径が576メートルとさらに大きいですが、その反射面は完全な球形ではなく、リング構造になっています]。

アレシボ電波望遠鏡の巨大な金属構造は、穴のあいたアルミニウム板で作られた球状の反射鏡を使用して、反射鏡の表面から約 168 メートル離れた可動アンテナ構造に入射する電波を集中させます。望遠鏡は固定されており回転することはできませんが、アンテナフィードの位置を変更することで、空の帯をスキャンして詳細な電波天文学観測を行うことができます。

アレシボ電波望遠鏡（上）、500メートル口径球面電波望遠鏡（中央）、ロシア科学アカデミー電波望遠鏡600（下）のサイズ比較。画像出典: wikipedia

アレシボ電波望遠鏡は半世紀以上にわたって数多くの輝かしい成果を達成してきましたが、ここではそのほんの一部を紹介します。

1. 1967年、アメリカの天文学者ゴードン・ペッテンギル率いるチームがこれを用いて、水星の自転周期を計測し、それまで信じられていた88日ではなく59日であると判明した。

2. 1974年、アメリカの天文学者ラッセル・ハルスとジョセフ・テイラーは、この望遠鏡を使って、最初のパルサー連星系（パルサーを含む連星系）であるPSR B1913+16を発見しました。彼らはこの連星系を長期間観測し、この連星系の公転周期がゆっくりと加速していることを発見した。これは重力波放射の間接的な証拠であり、アインシュタインの一般相対性理論の重要な予測を検証するものでした。二人は1993年にノーベル物理学賞を受賞した。

3. 1974 年、アレシボ電波望遠鏡は、地球と人類に関する基本情報を含んだ「アレシボ メッセージ」を、ヘルクレス座球状星団 M13 に送信しました。

アレシボ情報。画像出典：惑星居住可能性研究所、中国語翻訳：趙静源

4. 1992年、ポーランドの天文学者アレクサンダー・ヴォルシュチャンとカナダの天文学者デール・フレイルは、アレシボ電波望遠鏡を使用して、パルサーPSR B1257+12を周回する2つの惑星を発見しました[1994年、ヴォルシュチャンはパルサーを周回する3番目の惑星を発見しました]。これは人類が発見した最初の太陽系外惑星系でした。

さらに、アレシボ電波望遠鏡は、いくつかの地球近傍小惑星の電波画像撮影も実施し、多くの連星系小惑星を発見し、惑星防衛に重要な貢献を果たしました。また、同社は地球外知的生命体探査（SETI）にも参加しており、分散コンピューティング プロジェクト SETI@home にデータを提供していますが、地球外文明の存在の証拠はまだ見つかっていません。アレシボ電波望遠鏡は天文学の多くの分野で顕著な成果を上げ、人類の宇宙探査における不滅の記念碑となっています。

アレシボ電波望遠鏡による重要な発見。画像出典：Future、中国語翻訳：趙静源

アレシボ天文台は天文学研究の聖地であるだけでなく、科学教育や科学普及のための重要な場所でもあります。 1997 年にオープンしたビジター センターには、電波望遠鏡、天文学、大気科学に関するインタラクティブな展示があり、世界中から天文学者、学生、観光客が訪れて学んでいます。観察と実験を通じて、人々は宇宙の神秘をより深く理解し、科学への興味と愛情を刺激することができます。

しかし残念なことに、アレシボ電波望遠鏡は2020年に深刻な被害を受けました。同年8月、望遠鏡上部のプラットフォームを支える鋼鉄ケーブルが破断し、望遠鏡の反射面に長さ約30メートルの亀裂が入り、フィードキャビンに損傷を与えました。同年11月、別の鋼鉄ケーブルが破断した後、国立科学財団はアレシボ電波望遠鏡が倒壊の危険があり、安全に修復できないため解体すると発表した。同年12月1日、中央プラットフォームが電波望遠鏡の反射面上に崩落し、望遠鏡は完全に破壊され、約60年にわたる宇宙探査ミッションは終了した。

崩壊後のアレシボ電波望遠鏡。画像出典: 参考文献10

アレシボ天文台は、画期的な科学施設です。その輝かしい功績と悲劇的な結末は、人類による宇宙の謎の探究において重要な章となるでしょう。アレシボ望遠鏡は崩壊しましたが、天文学の分野におけるその遺産と影響は広範囲に及んでいます。この偉大な科学施設を記念して、国立科学財団は、天文学の精神と知識を継承し、前進させるために、アレシボ天文台の旧跡地に教育センターを建設することを計画しています。

同時に、アレシボ電波望遠鏡の崩壊は、科学施設の建設と維持には長期的な投資と注意が必要であることを私たちに思い出させます。今後、科学技術の進歩と人類の宇宙探査の深化に伴い、より先進的で安定した電波望遠鏡やその他の科学施設が建設され、人類に宇宙のさらなる謎が明らかになることを期待しています。

参考文献

1. アレシボ望遠鏡の設備プラットフォームが崩壊、中国科学、2021年、(19):11

2. 宇宙で最も正確な時計：ミリ秒パルサーの発見、中国計量科学、2016年、（11）：52

3. アレシボ天文台の紹介、中国科学技術協会第15回年次会議議事録 - 500メートル口径球面電波望遠鏡と地域開発フォーラム、2013年

4. アレシボ市の概要、中国科学技術協会第15回年次会議議事録 - 500メートル口径球面電波望遠鏡と地域開発フォーラム、2013年

5. この信号は5万年間宇宙に送信され、最終的には人類の位置を明らかにするでしょう。 WeChat パブリックアカウント「ナショナル ジオグラフィック中国ネットワーク」、https://mp.weixin.qq.com/s/ShkSOf1Z_pFBVpcF0-W-Dw

6. Campbell, DB, Davis, MM、Harmon, JK、「Arecibo Observatory」、米国天文学会誌、Vol. 12、5ページ

7. Jonathan S. Friedman、Stephen C. Collins、Rubén Delgado、Paul A. Castleberg、「アレシボ天文台上空の中間圏カリウム層、18.3°N 66.75°W」、Geophysical Research Letters、Vol. 29巻5号15-1～15-4頁

8. Gullahorn, GE、Rankin, JM、「Arecibo Observatory によるパルサータイミング結果」、Astronomical Journal、Vol. 83巻10号1219-1224頁。

9. バナナリーフ、かつて世界最大だったアレシボ望遠鏡の大きさはどれくらいですか？ 、WeChatパブリックアカウント「中国科学博覧会」、https://mp.weixin.qq.com/s/x17IxOVzrvx4wRFGkDfF9w

10. エリザベス・ハウエル、アレシボ天文台の望遠鏡の崩壊の写真はまさに悲痛だ、space.com、https://www.space.com/arecibo-observatory-radio-telescope-collapse-photos

11. アレシボ天文台、ウィキペディア、https://en.m.wikipedia.org/wiki/Arecibo_Observatory

12. アレシボ望遠鏡、ウィキペディア、https://en.m.wikipedia.org/wiki/Arecibo_Telescope

13. ヴィッキー・スタイン、アレシボ天文台：巨大宇宙望遠鏡の誕生、遺産、そして悲劇的な崩壊、https://www.space.com/20984-arecibo-observatory.html

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