集団ナルシシズムは社会にどのような影響を与えるのでしょうか?

© カラヴァッジョ/アトランティック

リヴァイアサンプレス:

個人的には、集団ナルシシズム集団の「内部浄化」に関する著者の分析に強く同意します。ワイマール共和国とナチス帝国の興亡を思い浮かべると、その間にヒトラーは内部でアーリア人を「浄化」し、外部では過激なナショナリズムを煽って戦争開始の勢いをつけました。もちろん、集団としての自信を確立するためには、まず自分自身のいわゆる優位性が揺るぎないものであることを保証する必要がある。このようにしてのみ、権力者はこの名の下での戦争の正当性を確立することができる（私は、2017年にイーリン出版社から出版されたソンドハイマーの著書「ワイマール共和国の反民主主義思想」を推奨する）。

実際、集団アイデンティティは一般的な現象であり、通常は人々が自分たちの集団の価値観に自信を持つことから生じます。しかし、人々が価値観の特定を過度に盲目的に追求すると、極端な方向に進んでしまう可能性が非常に高くなります。さらに、最も逆説的なのは、ある集団の人々が外の世界から認められたいという熱意が、実はその集団の一般的に脆弱で自信のない心理によって引き起こされているということだ。

2005年、心理学者のアニエスカ・ゴレツ・デ・ザヴァラは過激派グループを研究し、人々がテロ攻撃に参加する理由を理解しようとしていた。彼女は、20世紀の学者テオドール・アドルノとエーリッヒ・フロムが「集団ナルシシズム」と呼んだものと非常によく一致する何かに気づいた。

デ・ザバラはこれを「自分の集団の誇張された優位性に対する過剰な信念と、この優位性が外の世界に十分に認識されていないという信念」と定義しており、集団のメンバーは認識されることを望んでいるが、この欲求は満たされていない。

当初、彼女はこの現象は極端だが重要だと考えていた。彼女は集団ナルシシズムの考えの深刻さを測定するために「集団ナルシシズム尺度」を作成しました。この尺度には、「私のグループは特別な扱いを受けるに値する」や「私は自分のグループが当然受けるに値する尊敬を得られるよう決意している」などの記述が含まれています。回答者は同意の度合いに応じてスコアを付けることができます。

(www.sakkyndig.com/psykologi/artvit/zavala2009.pdf)

16年後の現在、デ・ザヴァラ氏はポーランドのワルシャワにある社会科学・人文大学の教授であり、ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジの講師として集団ナルシシズムに関する研究を主導している。これは決して極端な現象ではなく、宗教団体、政治団体、男性や女性のグループ、人種グループ、少数民族グループ、スポーツチーム、クラブ、ファングループなど、あらゆる種類のグループに存在する現象である、と彼女は認識するようになった。彼女は、現在世界を席巻している集団ナルシシズムに恐怖を感じていると語った。

(scholarworks.umass.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1991&context=dissertations_2)

集団ナルシシズムは単なる部族文化ではありません。人間は本来社会的な動物であり、これは必ずしも悪いことではありません。健全な社会的アイデンティティを持つことは、個人の幸福の向上に大いに役立ちます。しかし、集団ナルシシストは一般的に、内集団への忠誠心よりも外集団への偏見を抱く可能性が高くなります。最も極端な場合、集団ナルシシズムは政治的過激主義、さらには暴力を助長する可能性があります。

(kar.kent.ac.uk/80195/1/Main%20Document%20BJSP%20KAR%20FINAL.pdf)

(onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/pops.12569)

(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31343222/)

日常生活では、集団ナルシシズムにより、グループは耳を傾けなくなり、「他の」グループを一元的かつ均質的なものとして見るようになります。これを避ける最善の方法は、人々に、自分のグループに誇りを持つ方法を教えることですが、承認を求めることに執着しないようにすることです。

異なるグループは、自らの優位性について異なる物語を持っている可能性があります。つまり、彼らは自分たちが最も道徳的である、最も文化的に洗練されている、最も才能がある、最も力がある、または最も民主的であると信じている可能性があります。彼らは、集団の優位性は神からの賜物である、あるいは過去の経験を通じて獲得したものであると信じているのかもしれません。しかし、結局のところ、集団ナルシシストたちは他の集団を憎み、集団間の脅威と認識されることに非常に敏感なのです。

(onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/pops.12569)

最後に、集団ナルシシズムはしばしば偏見を生み出します。例えば、ポーランドの研究では、集団ナルシシズムの尺度で高得点を取った参加者は反ユダヤ主義である可能性が高く、一方、アメリカ人を対象とした研究では、高得点を取った参加者はアラブ系移民に対して否定的な態度をとる可能性が高かった。

(psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fpspp0000260)

(journals.sagepub.com/doi/10.1177/1368430211420891)

(journals.sagepub.com/doi/10.1177/0146167210380604)

集団ナルシシストたちは、外集団からの脅威を察知すると、激しく（そしてしばしば攻撃的に）反応する傾向があります。ポルトガルでは、欧州連合におけるドイツの地位が自国よりも高いと信じる集団ナルシストたちが「ドイツの経済危機に歓喜」し、ドイツ人に対する「敵対的行動」を支持している。同時に、集団ナルシシストは自分たちの内部メンバーを称賛し、自分たちの道徳的欠陥を無視します。ポーランド、英国、米国で最近行われた調査では、集団ナルシシズムのレベルが高い人は、バーで口論を引き起こすなど、グループのメンバーの行動がグループの利益になる限り、倫理的であるとみなす傾向があることがわかった。

(psycnet.apa.org/record/2016-45042-001)

(www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0022103120304388)

しかし、グループのメンバーは必ずしもこの考え方から利益を得るわけではない。集団ナルシシストたちは、グループにとって有害だと考える「内部の敵」を警戒しているのだ。皮肉なことに、集団ナルシシストは実際には個人的な利益のためにグループから離脱する傾向が高く、自分の目的を達成するためにグループのメンバーを利用する傾向があることが、いくつかの研究で明らかになっています。

(journals.sagepub.com/doi/10.1177/0963721420917703)

(kar.kent.ac.uk/80195/1/Main%20Document%20BJSP%20KAR%20FINAL.pdf)

ムッソリーニの傲慢さの典型的な行動。 © Bk ケント ウィーク‍

‍

ナルシシズムについて考えるとき、たいていは自慢、誇示、または自己重要感といったイメージが思い浮かびます。しかし、私を含む心理学者は、より脆弱な形態のナルシシズムを特定しました。それは、脆弱で不確かな自尊心、強い羞恥心と不信感、そして典型的には敵意と誇大妄想を伴うものです。

米国など一部の国では、集団ナルシシズムと誇大ナルシシズムは強く相関していますが、全体的には、脆弱なナルシシズムのレベルが高い人ほど集団ナルシシズムに陥る可能性が高くなります。集団ナルシシストは、個人としての自分の価値に自信がなく、外部からの承認を必死に求めているため、集団からの承認を得ることに執着している可能性があります。また、感情的な修復能力が欠如している可能性があり、集団ナルシシズムは否定的な環境刺激や否定的な感情に対する敏感さと関連しており、特に集団外の人々に対する向社会的本能を圧倒する可能性があります。

(onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/pops.12569)

しかし、結局のところ、集団ナルシシズムは効果的な対処戦略ではなく、自尊心を高めないことが研究でわかっています。実際、集団ナルシシストは、集団の優位性を認識できないということは、個人の長所が認識されていないことを意味すると信じ、脆弱なナルシシズムの特性を増幅させる可能性があります。予備的な調査結果がこれを裏付けています。

ある実験的研究では、研究者によって引き起こされた集団ナルシシズムの増加により、参加者の脆弱なナルシシズムのレベルも上昇しました。これは、人間が集団ナルシストになる可能性を持っていることを示しています。特にナルシシズムがグループ内で正常化され、広まると、私たちは皆それに巻き込まれる可能性があります。

(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31448939/)

(journals.sagepub.com/doi/10.1177/0963721420917703)

この可能性が最も顕著に表れるのは政治の分野です。第一次世界大戦後の集団ナルシシズムの台頭について、フロムは次のように書いている。「集団ナルシシズムは、最も政治的に重要な現象である…無名の人物が、自分の社会的アイデンティティを国に結び付けたり、自分の個人的なナルシシズムを同胞に伝えたりすれば、最も重要な人物になる。」

しかし、はっきり言って、愛国心は必ずしも集団ナルシシズムではありません。自分自身の国、政治団体、文化の独自性に健全な誇りを持ち、自分の文化の優位性を示すために他の文化を抑圧したいという欲求を持たないことは、まったく可能です。

(onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jts5.69)

集団ナルシシズムは左派、右派を問わず政党のいたるところに見られるが、特にポピュリストにとって魅力的なようだ。

世界中で、国家レベルでの集団ナルシシズムは、ポピュリスト政党や政治家への支持と強い相関関係にある。ある研究によると、集団ナルシシズムのレベルは、2016年の米国大統領選挙におけるトランプ大統領の支持率を予測する2番目に強力な要因（政党支持に次ぐ）だったという。また、これはトランプ支持者による国会議事堂襲撃や、トランプの非民主的な政権維持への取り組みへの支持とも関連づけられている（ある縦断的研究では、集団ナルシシズムが2016年の選挙における陰謀論の台頭を予測していたことさえ判明している）。集団ナルシシズムは、英国のEU離脱投票、ポーランドの反環境主義、ハンガリーの欧州連合に対する不満とも関連づけられている。

(www.researchgate.net/publication/342739859_Collective_narcissism_as_a_framework_for_ Understanding_populism)

(academic.oup.com/poq/article-abstract/82/1/110/4885411?redirectedFrom=fulltext)

(onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ejsp.2496)

(www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0272494418302640)

© インディペンデント

より小規模なグループやより日常的な場面では、集団ナルシシズムが依然として蔓延する可能性があります。ある研究によると、集団ナルシシズムのレベルが高いスポーツファンは、自分の好きなチームを批判するニュース報道に脅威を感じやすく、記者を傷つけたり「懲らしめてやる」と言ったりする傾向があるという。別の研究では、集団ナルシシズムの高い学生は、自分の大学に否定的な評価を与えた人に対して報復的な攻撃を仕掛ける傾向が強いことが分かりました。学生評価者になる機会があったという仮定のシナリオでは、彼らは否定的な評価を与えた人からの研究助成金申請を拒否したのです。

(scholarworks.umass.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1991&context=dissertations_2)

(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23586408/)

では、集団ナルシシズムの傾向を抑制し、集団間の調和を促進するにはどうすればよいのでしょうか?幸いなことに、健全なレベルの自尊心を持つことができるのと同じように、健全な集団内愛も育むことができます。つまり、メンバーが自分自身に満足し、集団の成果に誇りを持ちながらも、他の人に集団の優位性を認めてもらうことに執着しないということです。集団内での肯定的な満足度は幸福感の増加と関連しており、幸福感は生活満足度の向上、肯定的な感情、社会的つながり、感謝の気持ちにつながります。

(www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6383489/)

確かに、集団に対する人々の感情の根源は、個人に完全に依存しているわけではない。デ・ザバラ氏によると、集団ナルシシズムは自尊心の低い人々の間で蔓延する可能性が高く、極度の貧困や著しい社会的不平等の環境で、支配的な人物が自分たちのグループが不当に扱われていると信じている場合に発生する可能性が高くなります。

しかし、ナルシシズム的性格特性の中には、さまざまな状況で集団的なナルシシズム的思考を予測するものもあるため、性格の多様性は懸念される領域です。これをうまく観察するのは簡単ではありませんが、不可能ではありません。人は自己超越感情、つまり感謝、畏敬、思いやりなど自分を超えた感情とつながる向社会的感情を育むことができます。

(onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jts5.69#)

予備調査で、デ・ザバラ氏とバイアス・ラボの同僚らは、集団ナルシシズムを持つ人々が、否定的な感情をコントロールし、感謝の気持ちを培う能力を強化するために設計された6週間の「感謝」トレーニング・プログラムに参加した後、性差別、同性愛嫌悪、移民に対する偏見が減ったことを発見した。私が最近書いたように、実存的感謝は、否定的な感情を抑制し、トラウマに意味を見出すのに役立つ、私たち全員が利用できるツールです。

(sites.gold.ac.uk/prejudicelab/)

バイアス・ラボの別の研究では、当時大学院生だったマルティナ・コモロフスカが、感動的なビデオを見た後、参加者は対照群よりもシリア難民に対する偏見をあまり示さなかったことを発見した。このビデオは、突然の共感的な感情であるカマ・ムタを誘発することを目的としています。

(onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/pops.12569)

これらの影響がどれくらい続くかは不明ですが、少なくともこれらの研究は集団ナルシシズムが必然的なものではないことを示しています。集団ナルシシズムの傾向は幼少期に根付くものの、それ以上は発達しません。社会的アイデンティティが意味を持つためには必ずしも外部からの承認は必要ないことを子供たちに教えることで、優越感を必要とせずに内面から自尊心を育むことができます。これは他の人にも利益をもたらします。健全なレベルの自尊心を持つ人は、一般的に、自分の強みをグループのメンバーに利益をもたらすために使おうとします。彼らは他人を貶めることにこだわりません。

全員に自分の個人の価値を認めさせることができないのと同じように、全員に自分のグループの価値を認めさせることはできません。しかし、自分自身をどのように見るか、また自分のグループや世界をどのように見るかは、自分でコントロールできます。集団ナルシシズムから抜け出す唯一の方法は、グループ内で感じる権力感覚を超えて、上へ進み、他の人とつながることです。たとえ、これによって自分が特別であると考えることが容易になったとしてもです。

スコット・バリー・カウフマン

翻訳者：Yord

校正/アマンダ

原文/www.theatlantic.com/family/archive/2021/11/group-narcissism/620632/

この記事はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス（BY-NC）に基づいており、YordによってLeviathanに掲載されています。

この記事は著者の見解を反映したものであり、必ずしもリヴァイアサンの立場を代表するものではありません。